さて、前編の記事で、「店長」とは「あなたが事業で実現したい事を遂行してくれる人物」と定義をした。
その人物を社長が決める際に行う、具体的なステップを5つのプロセスに分けて紹介しよう。
順番としては、
- 社長である自分がどんなサロンにしたいのかを明確にしてから、
- 現在、自分がやっている事で、社内スタッフに任せたい事を決め、
- 具体的なマニュアルと、評価基準を作ったら、
- そのマニュアルを遂行するには誰が一番適正なのか?を考える。
この順番で行えば、おのずと「店長」を誰に任命すべきかが決まる。
この順番を間違えると、
「マニュアルは作ったけど社長がイメージしているサロンにならない」
「適正を考えずに店長を決めてしまって結果が出ない」
といった失敗のもとになるから、ぜひこのフローは守って欲しい。
最後には、
5.店長が決まったら、その店長にスタイリスト・アシスタント用のマニュアルを制作させ、管理させる
というのを付け加えたら、より完璧になるだろう。
では、その5つのポイントについて、分解して解説したいと思う。
Contents
1.社長である自分が「どんなサロンにしたいのか」を明確にする
マニュアルを制作する時の1つ目のポイントは、「会社とあなた自身の生活をこういう姿にしたい」という明確なビジョンを決める事だ。
マニュアルが他人に「こういう行動をして欲しい」という注文書である以上、社長本人が何をしたいのか、欲求を定義していないと、マニュアルを作りようがない。
「会社のあるべき姿を明確にする」、という行為は、
「社長の理想」と「会社で起こっている現実」のギャップを埋め込る行為を明確にする、という事。社長が事業を通して何をしたいか、何を成し遂げたいのかという欲求から逆算して考える事が大事だ。
社長自身が創業してから思い描いている夢や目標(理想)などのポジティブなもの以外にも、自分がサロンで抱えている問題点や苦悩(ギャップ)などのネガティブなものにもあえて注目するとアイディアが浮かびやすいだろう。
別に、崇高な理想や欲求じゃなくたっていい。
「週に3日ほどサロンワークするだけで成り立つようなサロンにしたい」
とか、
「1店舗しかないけど、思いっきり儲かるサロンにしたい」
でもいい。
創業者であるあなた自身がまず幸せになる為のマニュアルである事、これが一番大事。お客様、従業員の幸せは、事業主であるあなた自身が不幸であるならば、どうやって幸せにできようか。大株主であるあなたが不幸ならば、そもそも創業自体に意味がないし、株主(あなた)が幸せになる仕組みでなければ会社としての存在意義すらないと私は考えている。
上場企業を真似て、崇高な理想を挙げる必要はないのだ。零細企業は零細企業のやり方や理想がある。
例えば、
社長の理想→「自分が現場に不在でもサロンが回るようにしたい」
現実とギャップ→「社長がいないと美容院として売上もスタッフ管理も成り立たない」
というのがあなたの理想とギャップであれば、マニュアルの根底に流れる思想は「自分が現場に不在でもサロンが回るようになるためにはそうしたらいいか?」という考えをベースにし、それが実行されるところまで細分化しマニュアルに盛り込んだものにならなければ意味がない。
あなたの会社のマニュアルとは、事業主である「あなた」がどうなりたいか、どうしたいかというのが正しい基本ベースの考え方であり、それが細部にわたって実行される「仕組み」でなければならないのだ。
2.現在、自分がやっている事の中から、社内スタッフに任せたい事を決める
零細企業の社長ほど、自分で何でもやりたがる。社内で一番優秀なのは社長であるあなた自身だし、仕事の質もスピードも、あなたにかなう人材など社内にいないわけだから、何でもやりたがる気持ちはわかる。
社員のパフォーマンスを引き出すためにも、そこはぜひ自社の社員に任せるところは任せよう。せっかく雇用したのだから。
社内スタッフに任せたい仕事を決める、というのはいざ自分で考えると意外とわからないものだが、ここで1つのヒントがある。
「毎月、自分が口うるさく社員に言っている事は何か??」だ。
例として、
「アシスタントのカリキュラム(教育)は進んでいるか?」
「スタイリストの今月の売り上げ目標は達成できたか??」
など、あなたが社内ミーティングで口癖のように連呼している事、これを店長の仕事としてマニュアルに盛り込もう。
そうすれば、今日からその口癖はあなたではなくあなたが雇用した店長が必死にやってくれることだろう。
3.具体的なマニュアルと、評価基準を作る
「店長とは、店長業務を遂行する人物の名称である」
これは、社内に徹底させるべき考え方だ。「店長マニュアルを正確にこなす社員」を店長と呼ぶ。
仕事を正確にこなしていたらいつの間にか店長になれた、ではない。逆ではないのだ。
そういった意味では、業務遂行をしてくれる人物であれば、別に新人アシスタントであってもかまわない。
むしろ新人もしくはそれに近いような、まだ給料の低いスタッフこそ、店長に就任した時に必死に頑張ってくれるだろう。
なぜなら、私の推奨するこのマニュアルは、「店長とは、店長業務を遂行する人物の名称である」と断言している以上、店長業務を遂行しなければ店長は1円ももらえないからだ。
逆に、店長業務をしっかりこなせば、確実に店長手当の支払いは保証している。
考えてみれば当たり前のハナシで、
例えば、
残業手当に例えよう。
残業手当は「残業をしたからこそ」与えられる手当であって、
残業していないのであれば残業手当はそもそも受け取る権利は社員には無い。
それが、こと店長手当や役職手当になると、
どこの美容院の店長もたいして業務遂行していないのに毎月支払われているのだから、おかしな話である。実態のない架空「店長業」に毎月、手当を払うなんて、支払われる本人にも楽して金が入る=労働意欲を削ぐという意味では悪影響である。
店長手当および役職手当は、あくまで業務遂行したあかつきの事後払いのものであり、何もしなくてももらえる保障給や基本給ではないのだ。
だからこそ、
責任と権限を明確にするシステムとして、「店長職に必要なマニュアル作り」が必要だ。
マニュアル無き役職には評価ができない
上記の画像を見てほしい。
しっかりと、業務内容に、「社長が今まで自分でやっていた事」や、「こうあって欲しい」というのを盛り込んでいる。そして、それが実行できたか否か、をはっきりと判断できるように一目で評価できる仕組みにしている。
そして大切な事だからもう一度書くが、私の推奨するこのマニュアルは、「店長とは、店長業務を遂行する人物の名称である」と断言している以上、上記の申請書のチェック項目をこなしてなければ店長業務を遂行していないとみなして手当は1円も支払わない。業務遂行に対する手当なので遂行した実態がないのならば当たり前である。
逆に、このチェック項目を満たして店長業務をしっかりこなせば、確実に店長手当の支払いは保証している。
この申請用紙一枚を作るだけで、
「店長にやって欲しい事」をハッキリと言語化するだけで、社長はだいぶ精神的にも楽になる。
この申請用紙を最終的に社長がチェック項目を入れ、初めて店長に「店長手当」が入る仕組みである。
そして、店長である社員は、
「社長は会社とスタッフに何を求めているのか??」
「どんな行動を求めているのか??」
「どんな行為が評価されるのか??」
を常に考えて仕事をしてくれるようになる。
社長のあなたが店長に伝えるべきこと、とって欲しい行動内容は、全てこの申請書に言語化し、第三者でもはっきりわかるように視覚化しよう。
4.マニュアルを遂行するには誰が一番適正なのか?を考える
ここまでで制作したマニュアルは、社長であるあなた自身の想いや理想、そして会社の理念が反映されている。
ここまで来ると、カンのいいあなたならお気づきの事だろう。
そう、店長候補を選ぶ際のポイントで、最重要なのはこの4であり、あなたが制作した「マニュアル」と最も相性のいい人物こそ、店長にふさわしい、という事だ。
マニュアルの内容が気に入らない、従えない、というのであれば、それはそもそも大株主で創業者であるあなた自身に対する反乱分子であり、会社にとって相応しくない社員という事になる。
会社の理念と社長の想いに共感できないのであれば、それは働く方も雇用する方もお互い不幸であるから、その関係性は遅かれ早かれ終わる。
店長は、マニュアルとの相性で選べ!
店長業務を任せるべき人物がもつ店長としての「適正」を見抜けなければ、
もしかしたら「店長業務はやりたくないけど店長手当はよこせ」なんて店長も出てくるかもしれない。
ある意味、そういった「自社に最適な人材か否か」を振り分ける判断材料としても、マニュアル制作は効果を発揮してくれるだろう。
5.店長にスタイリスト・アシスタント用のマニュアルを制作させ、管理させる
以下の掃除の表は、実際に弊社が経営しているサロンの店長が、アシスタントに作らせたものである。
※ちなみに今回、使ったデータは以下のURLで拡大表示が可能。
上記のマニュアルを見てわかる通り、
店長は店長手当が「与えられた任務をこなす手当として」支払われている以上、このように必死になって自分の部下を育て、管理してくれる。店長自身が自ら、部下にマニュアルを作らせる事で、彼らを管理してくれるのだ。
何故なら、自分が管理している部下が毎月、結果を出さないと、自分の店長手当がもらえないから、それはそれは必死になる。
だからこそ、責任と権限、そして店長手当をどうしても欲しい、と思ってくれる若い社員が店長には適任だ。
ここまでくれば、社長であるあなた自身が現場を少し離れても、しっかりとあなたが経営するサロンの組織は維持され、結果を出し続けるだろう。
最後に
私が経営するサロンの店長も、21歳で美容師歴がたった2年の女のコだった。(他の社員の平均年齢は30歳前後だったにもかかわらず、である)
21歳で店長に就任させるとは、表参道界隈ではかなりの大抜擢だったと言える。
私が彼女を店長に抜擢した理由は3つ。
「人間性(性格)が店長に適任だったから」
「私の考えるサロンの在り方(マニュアル)を遂行するのに適任だったから」
そして最後に、彼女の若い年齢を考えると店長手当が上乗せされることにより、同年代の女のコたちよりも
「圧倒的に(同年代より)高収入」
になるからこそ、店長としてよく働き、そして長く勤めてくれるだろう、という私の目論見からだった。
予想は大的中。
なによりも、彼女自身が店長職に誇りを持って、生き生きと働いてくれているのが何よりも嬉しかった。
最近では店長を置かないフラットな組織もアリかなと思っているが、もしあなたが店長を現場のトップに沿えた組織づくりを目指しているのであれば、この記事が役立ってくれる事と信じている。