多くのサロン経営者が、店長という名のスタッフに高額の給料を払いながらも、それでも店長職として使いこなせていない事に頭を悩ませている。
あなたの経営しているサロンでも、「もっとウチの店長が店長の仕事をしっかりしてくれればいいのに….」なんて思った事はないだろうか??
原因は、社長であるあなた自身が店長に与えるべき仕事の定義を間違っているからだ。
「店長」という役職に対して、果たしてどれくらいの経営者が正しくその遂行すべき仕事内容について理解しているだろうか??
特に、現在あなたのサロンに居る店長を、
◆スタッフの中からお客さんの指名売り上げトップになった人物を店長にしている
◆年長者、もしくはキャリアが1番長い人物を店長にしている
◆スタッフみんなから慕われている人物を店長に任せている
上記のような要素だけで、店長という役割を任せているのであれば、それは人員の選択ミスか、もしくは新たに店長候補を探す必要があるかもしれないだろう。
Contents
店長の仕事と役割
一般的に店舗ビジネスにおける「店長」の役割とは、
◆店そのものの売上を管理
◆スタッフを管理し
◆店の戦術を考え、実行する
このような現場における責任者であり、そして管理者の事である。
日本のサロン経営において「マネージャー」と「店長」は同意義で使われる言葉だが、
もともとの言葉の語源としては「支配人、管理人」という意味であって、やはり役割としては「(現場の)管理を任されている人」というポジションを指している言葉である事は間違いないだろう。
しかし、これらの現場管理業務を社長が満足の行くレベルで店長が遂行できるケースは少なく、
多くのサロン経営者が店長の仕事ぶり、とくに「現場管理者としての」店長の能力に不満を持っているのも事実。
なぜ、店長は、社長が満足できるレベルで「店長の仕事」をできないのか??
その理由は、以下の3つのサロン経営における反比例の法則になる。
1.「人気技術者になればなるほど、管理者として無能になる」法則
美容院やネイルサロンなどは、店長がお客様をこなす技術者としても働きつつ、店舗責任者としての管理人としても働く、といういわゆる「プレイングマネージャー」と呼ばれる働き方をするパターンが最も多い。
それを表す以下のグラフを参考に説明しよう。
ホットペッパーの2018年6月現在のデータです。 引用元: HOT PEPPER Beauty
日本国内の美容院、ネイル、リラクゼーションサロンが最も多く掲載している「ホットペッパービューティー」の情報によると、2018年6月現在、掲載サロン37454件のサロンのうち、「店長」という役職を記載している(=店長を指名できる)美容院の数11930件になる。その数、実に掲載美容院全体の約3分の1。
「店長」というキーワードでヒットから漏れた人数も考慮すると、もっと多くの数字になると予想できる。
店長が現場管理者のみならず、技術者としての仕事も兼任している、という「現場管理者としての仕事に専念できていない」というパターンがこれほどに多い、というデータとも言えるだろう。
引用元: HOT PEPPER Beauty
上記のデータから「管理職ならず現場技術者も兼任している店長」が多いという事がわかったが、ここで注意すべき点がある。
店長という役職をスタッフに任せるにあたって、サロンの中で技術者と現場管理者を兼任させた場合、ある問題が発生することだ。
それは、
「技術者として売れっ子であればあるほど、店長として機能しない」
というジレンマである。
いち技術者として営業時間内にびっしりと、店長が顧客に指名されたらどうなるだろうか??
当然、店長は店舗管理者としての仕事はでなく、「技術者」として営業時間内はびっしり働く事になる。
そしてその間は、「管理者としての」店長は不在となる。
「技術者としてだけ」機能する店長だけであれば、それはもはや店長と言えない。何故なら、管理者としてまったく仕事をしていないからである。
プレーヤーとして売れっ子であるが、管理職者としての任務を遂行できないような人物であれば、それは店長という役職ではなく、「トップスタイリスト」や「トップネイリスト」という名の役職を与えた方が良いだろう。店長という役職はあくまで店舗の管理者(マネージャー)をこなしてこそ、だからだ。
お客さんからの人気があるからこそ、店長職を任せたのに、
店長自身が人気の技術者になればなるほど、管理者として仕事をしてくれる時間が無くなる。
技術者として働く時間と、管理者として働く時間は反比例するのである。
何たるジレンマであろうか…。
2.「キャリアの長いスタッフほど、「店長手当」を少なく感じる」法則
店長職についているスタッフは基本給+店長手当を付けて、他のスタッフに比べると給料を多く払うというケースも多く見られる。
店長になるほどの長いキャリアを持つスタッフは、もともと新人社員や中堅クラスの社員よりも多くの給料をもらっている為、受け取る「店長手当」の割合を少なく感じる、という法則がある。
例えば、店長手当が10万円だと仮定して説明しよう。
基本給が20万円の社員Aの場合……店長手当10万円=手当は基本給の50%に相当
基本給が40万円の社員Bの場合…..店長手当10万円=手当は基本給の25%に相当
といった具合に、もともとの給与額が多ければ多いほど、相対的に「手当」で受け取る報酬が本人からすれば感覚値としては少なく感じる事になる、という法則だ。たとえ両者の手当の報酬額が同じ金額だとしても。
これでは、モチベーションや、社長であるあなたへの感謝も少なくなってしまうのも当然の結果だ。
上記のたとえた例でいうと、基本給が40万円の社員Bが、社員Aが受け取る報酬の基本給に占める割合まで引き上げようと思ったら、実に20万円もの手当を支給しなければならなくなるのだ。
3.「スタッフから慕われている店長でも、実は社長の味方とはかぎらない」法則
スタッフから慕われている人物が店長になるメリットとしては、
スタッフの統率がよく取れ、そして社長不在でも店を安心して任せる事ができる、という事が考えられる。
しかし、スタッフからの人望が厚いからこそ、独立開業して店を抜けられた時に、ごっそりとスタッフごと持っていかれる可能性も高まる。社長不在でも店が回っているという事は、なにもあなたが社長でなくても良い事だからだ。
本当に有能な現場管理者である店長は、スタッフから人望があるのと同時にスタッフから大いに嫌われ、恐れられているちょっと「怖い存在」であるべきだ。
一見、相反するような事に思えるようだが、それには理由がある。
現場管理者とは、管理者ゆえにスタッフに嫌われるような役割に回る事も必要だからである。時には目標未達成のスタッフや、著しく勤務態度のよろしくないスタッフを叱責したりするのも仕事内容に含まれているから、必然的にスタッフから必要悪として「恐れられる」事も店長としては致し方ない事であり、むしろ業務内容の一環であるとも思える。
これは、かの有名なリーダー必読の名著、マキュベリの「君主論」でも、以下のように記されている。
「愛されるより、恐れられよ」
リーダーや管理者とは、慕われるよりも時に恐れられるくらいの威厳を放つ方が、結果的にチーム全体が幸せになれる、という論理だ。
もしスタッフの誰からも愛され、好かれているような店長であれば、それはスタッフに嫌われる管理者としての仕事を放棄しているという事と同意義である。
社長はある意味、現場での「恐れられる」ほどの責任と権限を店長に外注しているとも言えるだろう。
しかし、それを店長が行わずに、スタッフから愛を媚びて迎合しているようでは、いずれ社長であるあなたが代わりに「嫌われ役」をやる羽目になるだろう。
店長手当という名の高い外注費を毎月払っているのにかかわらず、だ。
まとめ
ここまで読んでいただくと、
- スタッフの中からお客さんの指名売り上げトップになった人物を店長にしている
- 年長者、もしくはキャリアが1番長い人物を店長にしている
- スタッフみんなから慕われている人物を店長に任せている
店長という役割を任せるには上記の理由だけでは不十分である、というのがご理解いただけたかと思う。
店長を任せるにあたって、一番大切な要素、それは何であろうか??
それは、
あなたが事業で実現したい事を遂行してくれる人物
である。この一言に尽きる。
指名売り上げも、キャリアも、人望も、店長という役職を任せる要素にまったく関係ないのだ。
では、次の記事にはどうやったら「あなたが事業で実現したい事を遂行してくれる人物=店長」を正しく生み出せれるのかをあなたに詳しくご説明したいと思う。
…..後編に続く